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運転資金を理解する -2-

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増加運転資金とは

 

平均月商および立替期間の拡大により増加する運転資金の増加部分のことを

増加運転資金といいます。

売上が増えているのに資金繰りが厳しいのは、増加運転資金の発生が原因です。

 

簡単に(直感的に)説明すると、次の通りです。

売上が伸びているときは、それに対応するために仕入も増やしていく必要が

あります。

しかし、一般的に売掛金の回収より買掛金の支払の方が先になります。

そのうち、増加した支払分(=現在の仕入)を

増加する前の回収分(=過去の売上)でまかなうことができなくなります。

つまり支払資金が不足してしまうのです。

 

売上がいくら増えると増加運転資金がいくらになるか、計算することができます。

増加運転資金の金額がわかれば、

前もって手当て(資金調達)するのに役立ちます。

 

増加運転資金の予測計算

 

売上増加により運転資金がどれだけ必要になるか、

【表3-1】【表3-2】を例にして計算してみましょう。

ここでは立替期間(回収条件、支払条件、在庫水準)が一定であると

仮定します。

 

直近の月次試算表で、現在の(増加前の)月商を確認します。

月によって売上高の変動が激しい場合は、過去3~6ヵ月くらいの平均値を

使用します。 →①

 20,670,000÷6=3,445,000(6ヵ月平均月商)

 

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直近の月次試算表で、現在の売上債権(売掛金受取手形)、在庫、

仕入債務(買掛金、支払手形)を確認します。 →②

 

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次の式でそれぞれの回転期間を算出します。

売上債権回転期間=売上債権÷月商

 6,480,000÷3,445,000≒1.88

在庫回転期間=在庫÷月商

 1,500,000÷3,445,000≒0.44

仕入債務回転期間仕入債務÷月商

 1,728,000÷3,445,000≒0.50

 

次の式で収支ズレ(立替期間)を計算します。

収支ズレ=売上債権回転期間+在庫回転期間-仕入債務回転期間

 1.88+0.44-0.50=1.82

 

増加後の月商を予測します。

ここでは月商規模が1.5倍になると仮定します。

 3,445,000×1.5=5,167,500

 

次の式で増加運転資金を計算します。

増加運転資金=(増加後の月商-現在の月商)×収支ズレ

 (5,167,500-3,445,000)×1.82=3,134,950

 

以上より、新たに調達が必要となる運転資金(増加運転資金)は、

約314万円であるとわかります。

 

 

次回予告:資金繰りに困った場合

 

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世界の銀行から 永隆銀行・招南銀行/香港

 

 

運転資金を理解する -1-

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運転資金を理解すると、借入申込の際に役立ちます。

金融機関に対して、資金使途と借入希望金額の根拠を説明しやすくなります。

 

運転資金とは資金の立替

 

仕入→在庫→売上と会社の営業活動が循環していく中で、

仕入代金の支払時期から売上代金の回収時期まで時間がかかるため、

その期間は資金の立替が必要になります。

この立替が必要な資金のことを運転資金といいます。

 

手元資金が潤沢であればそれを充当できますが、

余裕がなければ金融機関からの借入などで手当てする必要があります。

運転資金は、設備資金と並んで、金融機関の事業資金融資の主な目的(資金使途)

となっています。

 

成長している会社は、立替期間のためだけでなく、売上の増加が原因で、

立替が必要な金額も増加します。

売上が増加しているのに資金が必要というのは、

一見矛盾しているようにも思えますが、

放置すると資金繰りがどんどん厳しくなっていきます。

なぜそうなるのか、順を追って説明します。

 

自社で必要な運転資金を計算しよう

 

必要な運転資金のことを所要(経常)運転資金といいます。

 

所要運転資金は、以下の計算式で求めることができます。

所要運転資金=売上債権(A)+在庫(B)-仕入債務(C)

 

売上債権とは、売掛金受取手形のことです。

仕入債務とは、買掛金や支払手形のことです。

 

所要運転資金は、貸借対照表で考えるとイメージしやすいです。

 

(A)+(B)が(C)より大きいと、

その差額を何かで埋めなければバランスが取れません。

負債または資本で調達する必要があります。

具体的には、借入金、資本金(増資)または繰越利益剰余金(利益の蓄積)など

になります。

 

(A)+(B)が(C)より小さければ、

資金的に余裕があるので、調達は不要です。

その差額は、現預金や設備投資などで運用されている状態といえます。

 

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平均月商と回転期間から原因を分析する

 

ここから少し深掘りしていきます。

 

(A)、(B)、(C)の3要素を平均月商(月売上高の平均)と回転期間に分解します。

 

売上債権=平均月商×売上債権回転期間

在庫=平均月商×在庫回転期間

仕入債務=平均月商×仕入債務回転期間

 

回転期間とは、売上債権、在庫、仕入債務がそれぞれ平均月商の何ヵ月分あるか

という指標です。

 

所要運転資金の計算式を以下のように書き換えます。

所要運転資金=

平均月商×(売上債権回転期間+在庫回転期間-仕入債務回転期間

 

回転期間の差(ズレ)は、会社の営業活動の循環(仕入→在庫→売上)における

立替期間(収支ズレ)を意味します。

 

よって、次のように表現することができます。

所要運転資金=平均月商×収支ズレ

 

この計算式から以下のことが分かります。

・平均月商(売上)が増えると必要な運転資金が増加する。

・収支ズレ(立替期間)が延びると必要な運転資金が増加する。

 

自社の資金繰りが厳しいのは、売上増加のためか、立替期間拡大のためか、

原因がわかります。

成長している会社は、立替期間が延びていなくても、

売上が増加すると、必要な運転資金も増加します。

 

 

次回予告:増加運転資金とは

 

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世界の銀行から 萬泰銀行/台北

 

 

資金繰りが厳しい主な理由

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ある会社にとって何が資金繰りのネックになっているのか、

業種、業態によって大きく異なります。

 

(1)そもそも赤字経営(損益がマイナス)である

 

手元資金を増やすためには、継続的に利益を出していく必要があります。

今は手元資金が十分あっても、赤字続きであれば、どんどん減少していきます。

 

事業自体が赤字の会社は、金融機関からの資金調達にも苦労します。

金融機関は赤字補填資金を貸してくれません。

 

ビジネスモデルの再検討、営業活動の改善、経費の見直しなど、

根本的な改革が求められます。

 

(2)売上代金(売掛金)回収までの期間が長い

 

(a)現金商売は資金繰りが楽

 

業種、業態により、一般的には以下のような傾向があると言われています。

・建設業、製造業、卸売業など「B to B」企業は、回収期間が長く、

 資金繰りに余裕がない。

・飲食業、小売業、サービス業など「B to C」企業は、回収期間が短く、

 資金繰りに余裕がある。

 

現金商売や前金商売は、売上による現金収入が先で、仕入などの支払が後に

なるため、手元資金に余裕ができます。

しかし、余裕があるからと言って、勘違いして無駄遣いするのは禁物です。

いずれ支払うべき時がやってきます。

 

(b)不良債権に注意

 

回収までの期間が長い原因のひとつに、不良債権があります。

 

ほとんどの得意先は売上代金を約束通り期限までに支払ってくれますが、

そうでない得意先があるのも事実です。

毎月、売掛金の一覧表や得意先元帳などと銀行口座の通帳を照合して、

入金が遅れていないかチェックしましょう。

この作業を、売掛金の消込といいます。

 

先方の単純な支払漏れ(事務ミス)の場合もありますが、

お金にルーズである得意先には、できるだけ早く督促をすることをおすすめします。

こちらから督促しないと、先方がこのまま延滞しても大丈夫だと勘違いしてしまい、

どんどん不良債権の金額が膨らんでいきます。

膨らんだ分だけ資金を立て替えることになるので、資金繰りの負担になります。

そうこうするうちに、その得意先の業績が悪化して倒産ということになれば、

回収不能(貸し倒れ)になってしまいます。

 

(c)「元も子もない」貸し倒れの怖さ

 

貸し倒れが発生すると、その損失を取り戻すのがどれほど大変か、説明します。

 

例えば、粗利率が20%の商品100万円を販売した取引先が倒産して

貸し倒れとなった場合、その失った100万円を取り戻すためには、

どこか他の販売先を見つけて500万円の商品を販売しないといけません。

 

銀行の場合、貸し倒れの影響はもっと甚大です。

 

最近の銀行の利ザヤ(資金の運用利回りと調達利回りの差)の中央値は、

0.14%ということです(東京商工リサーチ調べ 2019.09.09)。

もし融資した取引先が倒産して1000万円が貸し倒れとなった場合、

それを1年で取り戻そうとすると、71億円以上を預金で集めるか

市場から調達してきて他の企業に貸し出しする必要があります。

銀行には融資以外の運用手段もあるので、

必ずしも融資で取り戻す必要はないかもしれませんが、なかなかすごい金額です。

テレビドラマ「●沢直樹」のように、簡単に債権放棄とはいきません。

融資の審査が厳しかったり、担保や保証人を求められたりする理由が

ある程度わかりますね。

 

一般の事業会社においても、新規取引開始の際は相手方の信用調査を

行うことが多いです。

 

(3)仕入代金(買掛金)支払までの期間が短い

 

上代金(売掛金)回収の場合と同じ理由で、支払を先に延ばすことができれば

資金繰りが楽になります。

極端に短い場合を除き、簡単には実現できないと思いますが。

相手先(仕入先)の同意なく支払を延ばすと、

信用を失って取引解消に至ることもあります。

不良債権の項で説明したように、回収する相手先の立場に立って考えれば、

当然のことですね。

 

(4)在庫が多い

 

商品が売れず、倉庫に眠っている在庫が多くなると、資金繰りが厳しくなります。

売れないのにどんどん仕入れていくと、売上代金が入らず

仕入代金は出ていく一方で、手元資金が在庫に化けた状態になります。

一時的な販売不振ならいいのですが、

長期化すると商品が陳腐化して販売が困難になってきます。

倉庫代がかさんだり、不良在庫の処分に廃棄費用がかかったりして、

損失が拡大することもあります。

 

逆に、極端に在庫を圧縮すると、せっかくの注文に対応できず

販売機会の損失につながってしまいます。

 

商品の棚卸を行って、適正な在庫の水準を保つような調整や管理が必要です。

 

(5)設備投資が過剰である

 

過剰な設備投資にならないように、設備の導入前に慎重に検討しましょう。

特に借入をして設備を購入する場合は、

返済の原資となる利益が継続的に確保できなければ、資金繰りを圧迫します。

 

(6)消費税をプールしていない

 

消費税の納税間際になって慌てるケースを見かけます。

法人税と異なり、赤字経営であっても課税されます。

あくまで預り金であることを忘れないようにしましょう。

 

 

次回予告:運転資金を理解する

 

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世界の銀行から バンコク銀行/上海

 

 

収支と損益

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収支と損益は、一般的には似たような意味で使われていますが、

会社の経営管理においては、はっきり区別して(定義して)使用します。

 

 

損益、収益、費用の関係

 

損益(計算)とは、会社の一定期間の経営成績を評価するための会計上の考え方

です。

 

損益は、以下の式で計算されます。

損益=収益-費用

 

損益がプラスの場合を利益、マイナスの場合を損失といいます。

 

収益には、売上、受取手数料、受取利息、固定資産売却益などが該当します。

費用には、仕入、給料、支払家賃、通信費、水道光熱費、支払利息、減価償却

などが該当します。

 

 

損益と収支の違い

 

損益計算書や月次試算表を見ても資金繰りがわからないことの原因は、

損益と収支の違い(ずれ)にあります。

 

損益は、実際の資金の入出金(収支)の時期とは関係なく、収益は実現主義、

費用は発生主義という考え方で計上されます。

現代の企業が一過性のものではなく継続することを前提にしているため、

収益に対応した費用を適切に計上して一定期間の正しい損益状況(経営成績)を

示すことが目的で、実現主義、発生主義という考え方が採用されています。

 

どんどん本筋からはずれていきますので、ここでは実現主義および発生主義の

説明は控えておきます。

 

損益と収益の違いが生じるケースについて、以下に具体例を挙げておきます。

 

(1)売上と売掛金

 

飲食業のような現金商売の場合は、

売上の発生と同時に現金(資金)が回収されるため、

収益と収入の時期が一致します。

企業を相手にした取引では、通常は売上の発生時に売掛金となり、

対価としての資金の回収(入金)は後日になるため、

収益と収入の時期は一致しません。

業種、業態によっては、さらに売掛金の全額が入金されず、

一部が受取手形によって支払われます。

受取手形が決済されてはじめて資金化するため、

売上から回収まで長期間(数ヵ月)となることがあります。

 

売掛金という言葉は、ビジネスの世界では当たり前に使われているとずっと

思っていましたが、実はそうでもないようなので、説明しました。

 

余談ですが、

わたしがある会社の営業部門の売上計上業務を担当しているときに、

上司の部長から「売掛金とは何か?」と質問され、驚いたことがあります。

その部長は50歳代後半の方で、中途入社されたばかりでした。

前月の売上高確定の承認をいただくべく、営業部門の責任者である部長に

月次集計資料を提出しましたが、資料の説明をしている際に質問されたのです。

新卒で保険会社に入社し30年以上勤務して当社に転職してきたそうですが、

保険会社では売掛金という言葉に触れる機会がなかったということです。

保険会社の売上は保険料になりますが、保険の加入者(契約者)が個人であれ

企業であれ、保険料を支払わないことには保険契約の効力は発生しないので、

掛取引という考え方は出てこないのですね。

 

(2)仕入と買掛金

 

企業を相手にした取引では、通常は仕入の取引時に買掛金となり、

対価としての資金の支払(出金)は後日になるため、

費用と支出の時期は一致しません。

業種、業態によっては、さらに買掛金の全額を支払わず、

一部を手形の振出(支払手形)によって支払います。

支払手形が決済されてはじめて出金となるため、

仕入から支払まで長期間(数ヵ月)となることがあります。

 

(3)前払費用、前払金

 

家賃や保険料を前もって支払った場合です。

毎月支払えばよい費用であっても、例えば1年分を前払いすると割引になったり

することがあります。

その場合、会計上は支払った時点で全額を費用計上するのではなく、

サービスを受ける月に割り振って計上します。

 

(4)固定資産

 

固定資産を購入した場合、会計上は支払った時点で全額を費用計上するのではなく、

使用可能な期間に割り振って計上します。

この制度を減価償却といいます。

費用を割り振る期間(耐用年数)は、固定資産の種類により異なります。

 

(5)借入金

 

会計上は、借入は収益になりません。

同様に、返済は費用になりません。

 

 

次回予告:資金繰りが厳しい主な理由

 

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世界の銀行から オーバーシー・チャイニーズ銀行/クアラルンプール

 

資金繰り表作成の手順 -5-

 

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売掛金回収の予測方法

 

資金繰り予定表の作成において、売掛金回収の予測方法をもう少し深掘りして

説明します。

 

1.得意先別の売上計画がある場合

 

予測の精度を上げるため、別シート【表2-1】を使って得意先別に算出していきます。

 

(1)月別売上計画がない場合

 

得意先A社の前期売上高について、通期合計および月別の実績額を入力します。

 →①

 

A社の前期売上高について、月別の割合を算出します。 →②

例:4月 200÷2,550=7.8%

 

A社の当期売上高(通期合計)に前期の月別割合を乗じて当期の月別売上高を

算出します。 →③

例:4月 2,805×7.8%=220

 

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A社の売掛金回収条件に合わせて月別売上高を移動させます。 →④

【表2-1】では、月末締め翌月末回収として、1ヵ月後ろ倒しで入力しています。

翌々月末回収の場合は、2ヵ月後ろ倒しで入力します。

 

予測の開始月(ここでは4月)の売掛金回収額は、前月(3月)の売上高実績額を

入力します。 →⑤

 

上記の工程を他社(B社、C社~)についてそれぞれ行います。 →⑥

 

全社分を集計して、本体シート(資金繰り予定表)へ転記します。 →⑦

 

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(2)月別売上計画がある場合

 

上記①~③の工程は省略できるので、策定されている月別計画値を用いて、④~⑦の工程を進めてください。

 

 

2.得意先別の売上計画がない場合

   (データが入手できない場合も含む)

 

【表2-2】を使って簡便的に、全社分を一括で算出します。

 

前期の資金繰り実績表の月別の売掛金回収額(全社合計)を入力します。 →⑧

 

全社の売上伸展率を算出します。 →⑨

売上伸展率=当期売上高(計画値)÷前期売上高(実績値)

 

前期の月別売掛金回収額に売上伸展率を乗じて当期の月別売掛金回収額を

算出します。 →⑩

例:4月 5,350×120.0%=6,420

 

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 次回予告:収支と損益

 

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世界の銀行から 臺灣土地銀行/台北

 

 

資金繰り表作成の手順 -4-

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科目ごと予測のポイント

 

資金繰り予定表の作成において、科目ごと予測のポイントを説明します。

 

【前月繰越現預金残高】

現金、小口現金、当座預金普通預金、通知預金など、すぐに換金できる

流動性の高いものが該当します。

定期預金、積立預金、外貨預金などの内、すぐに解約できないようなものは

除外しておいたほうが無難です。

将来に解約の予定がある場合は、財務収支の中に項目を設けて記載してください。

 

売掛金回収】

売上計画と連動して予測していきます。

得意先が多数あったり、得意先ごとの回収条件(入金までの期間)が異なる場合は、

資金繰り予定表(本体シート)とは別にシートに一覧表を作成して集計すると

精度が上がります。

※詳細は次回の記事で説明します。

 

【 手形入金・手形割引】

現金化される(口座で入金扱いとなる)タイミングで計上します。

得意先から受け取ったタイミングや銀行に手形を引き渡したタイミングでは

ありません。

 

【その他収入】

補助金助成金、保険解約返戻金などの入金予定がある場合は記入します。

 

【買掛金支払】

仕入計画と連動して予測していきます。

仕入先が多数あったり、仕入先ごとの支払条件(出金までの期間)が異なる場合、

資金繰り予定表(本体シート)とは別のシートに一覧表を作成して集計すると

精度が上がります。

仕入計画がない場合は、過去の原価率などを参考にして、

売掛金から簡便的に算出(予測)します。

基本的な考え方は売掛金回収と同じなので、売掛金回収の説明を参考にして

ください。

 

【手形決済】

決済される(口座から出金扱いとなる)タイミングで計上します。

仕入先に振り出したタイミングではありません。

 

【人件費】

人員計画と連動して予測していきます。

退職予定者や採用予定者、昇給・減給予定者がいる場合、

資金繰り予定表(本体シート)とは別のシートに一覧表を作成して集計すると

精度が上がります。

基本給だけでなく、残業手当、通勤手当についても、同様の考え方で予測します。


法定福利費

納付時期に十分注意しましょう。

社会保険料

 毎月納付です。

労働保険料

 一括納付(7月)なのか、分割納付(7月、10月、1月)なのか、確認しましょう。

 

【税金】

納付期限に十分注意しましょう。

正確な金額の算出は知識がないと難しいので、前期、前々期などを参考に、

概算でいいかと思います。

法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税・消費税

 納付期限は決算後2ヵ月以内です。

 予定納税の対象か、確認しましょう。

 予定納税とは、前期の税額が一定額以上になった場合に、

 当期の税額の一部をあらかじめ納付しなければならない、という制度です。

 前期は予定納税の対象外であっても、売上高や利益などの課税標準額

 変動により、当期より対象となる場合があります。

・償却資産税

 納付期限は年4回あります。

・源泉所得税

 毎月納付なのか、特例納付(1月、7月)なのか、確認しましょう。

 特例納付とは、原則は毎月納付することになっているが、支給人員が10名未満の

 会社は、申請により年2回にまとめて納付できる、という制度です。

 

 

 次回予告:売掛金回収の予測方法

 

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世界の銀行から Bank of America/香港

 

資金繰り表作成の手順 -3-

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全般的なポイント

 

資金繰り予定表の作成において、全般的なポイントを説明します。

 

希望的観測の入った甘い数字だと後々あわてることになるので、

保守的に、固く見積もったほうがよいでしょう。

収入は最小限のところで予測し、支出は漏れのないように最大限に見積もります。

 

判断に迷う場合は、売上計画がうまくいった場合とうまくいかなかった場合など、

いくつかのパターンに合わせて複数の予定表を作成してみるとよいでしょう。

新たな事実が見えてくるかもしれません。

 

銀行などに事前に事業計画や年次予算などを提出している場合は、

それらの資料とつじつまが合うように作成しましょう。

銀行などから質問されたときに、根拠が示せるように準備しておきましょう。

つじつまが合ってなかったり、根拠が示せなかったりすると、

資料の信頼性が疑われてしまいます。

 

予測した金額と実際の金額にずれがあった場合、予定表を都度修正しましょう。

将来の現預金残高の把握が資金繰り表作成の重要な目的です。

ずれを放置すると、どんどん差異が拡大して、正しい判断や対応が

できなくなってしまいます。

特に、売上や仕入など月や季節によって金額の変動が大きいものは、

前月の実績が確定次第、翌月以降の売掛金回収額や買掛金支払額などに

反映させましょう。

予定表を修正するにとどまらず、ずれがあった原因を追究し、

今後の予測に役立てることも大切です。

 

月末日が金融機関休業日に当たる月は要注意です。

カレンダーを確認しましょう。

家賃などの支払が前営業日、売掛金などの入金が翌営業日の場合、

資金ショートの可能性が出てきます。

 

消費税の経理処理には、税込経理方式と税抜経理方式の2種類の方法が

認められています。

税抜経理を選択している場合は、税込ベースに換算して資金繰り表を

作成してください。

実際の入出金は税込金額で行われるからです。

多くの会計ソフトで、税抜/税込表示の切り替えが簡単にできると思います。

 

 

次回予告:科目ごと予測のポイント

 

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世界の銀行から ベトナム工商銀行/ダナン