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初心者向け わかりやすく道案内します

資金繰り表作成の手順 -2-

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予定表の作成にチャレンジ

 

実績表はデータから機械的に作成することが可能ですが、

予定表の作成は難易度が少し上がります。

過去に発生しなかったが、今後発生する可能性がある取引を予測して織り込む

必要があるからです。

 

まずは大まかなものでよいので、作ってみることをおすすめします。

作成していくうちに徐々に精度が上がってきます。

 

年次予算を組んでいる場合は、それをベースに作成していきます。

 

以下のような場合も、実績表を作成していれば、予定表を簡易的に作成することは

可能です。

 ・年次予算を組んでいないが、売上計画(月別、得意先別)を作成している場合

 ・売上計画(全社の年間合計)は作成しているが、月別、得意先別になって

  いない場合

 

 

月単位で6ヵ月~1年分の予定表を作成してみる

 

通常は月単位で作成します。

 

資金繰りが厳しい場合は、日単位で作成したほうがよい場合があります。

月末ではなく、月中のどこかで資金ショートする恐れがあるからです。

例えば、源泉税や労働保険料の納付期限のように月末日以外に多額の出金がある

場合があります。

 

1年分を日単位で作成するのは現実的ではないので、まずは月単位で作成し、

資金繰りが厳しいと予想される月について日単位で作成するのがよいでしょう。

 

 

次回予告:全般的なポイント

 

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世界の銀行から Fiba銀行/イズミール

 

資金繰り表作成の手順 -1-

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ここからは、具体的な作成手順を説明します。

細かい説明になりますので、実務を手掛ける必要のない方は、

読み飛ばしていただいて結構です。

理解を深めたい方は、是非自分で手を動かしてチャレンジしてみてください。

 

 

まずは実績表を作成してみる

 

預金通帳や現金出納帳を準備してください。

 

形式は自由なので、ご自分に合った方法を選んでください。

 ・会計ソフトに作成機能があればそれを使う。

 ・インターネットで検索して、フォーマットをダウンロードする。

  使いにくい場合は改変して使ってもよい。

 ・エクセルなどで自分で一から作成する。

 

会計ソフトから現預金取引の仕訳データが抽出できれば、集計や入力の手間が省けます。

仕訳データをエクセルのピボットテーブルを使って科目ごと月単位に集計します。

集計した金額を該当月の該当科目に転記していきます。

 

集計単位は科目ごとでなくても問題ありません。

例えば、役員報酬、給料手当、法定福利費などをまとめて人件費という項目(集計科目)にしても大丈夫です。

ただし、可能な限り細かく分けておいたほうが、予定表を作成する(未来を予測する)際に参考になります。

 

まずは過去1年分を作成してみましょう。

何年分も遡って作成する必要はありません。

 

 

次回予告:予定表の作成にチャレンジ

 

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世界の銀行から KEBハナ銀行/ソウル

 

 

資金繰り表とは -4-

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実績表と予定表

 

資金繰り表には、実績表と予定表の2種類があります。

 

これまで見てきたのは、「資金繰り実績表」です。

その名の通り過去の資金繰り実績を表します。

一方、「資金繰り予定表」は未来の資金繰りの予測を表します。

 

より重要なのは、「資金繰り予定表」です。

そもそも資金繰り表を作成するのは、未来の資金繰りを予測し、

資金不足に陥りそうな場合に、事前に対策を講じて倒産を回避することが

目的だからです。

 

 

実績をベースに未来を予測する

 

過去実績より未来予測が重要といっても、いきなり未来予測するのは難しいので、

まずは過去実績をしっかり把握します。

過去実績を分析することで、より精度の高い未来予測が可能になります。

 

事業計画や予算を策定している場合は、

資金繰り予定表をそれらに連動させることになります。

 

資金繰りは月単位で組むことになるので、

月単位で事業計画や予算を組んでいる場合は、

入金時期や支払時期の調整は必要ですが、ほぼそのまま活用できます。

 

月単位で事業計画や予算を組んでいない場合、

過去実績を参考にして未来予測を行う必要があります。

例えば、売掛金入金(売上)の予測に過去の季節変動要因を織り込んだり、

税金支払月や賞与支払月の情報を反映したりします。

 

 

資金繰り表は内部管理用の資料

 

資金繰り表は、損益計算書などと異なり年次決算や税務申告の添付資料に

含まれていません。

法的に作成が義務付けられている資料ではないのです。

 

会社の内部資料なので、形式は自由です。

 

ただし、すでに借入をしている、またはこれから借入をしようとしている場合、

金融機関から提出を求められる場合があります。

融資をする金融機関の立場からすると、

その会社に返済能力があるかどうかが決定的な判断基準になります。

資金繰り表を作成して返済能力があることを金融機関に示すことができれば、

融資が通りやすくなります。

 

 

次回予告:資金繰り表作成の手順

 

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世界の銀行から 中国銀行中国工商銀行中国農業銀行/上海

 

資金繰り表とは -3-

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資金調達しなかったら…

 

もし、資金調達しなかった(あるいは、資金調達できなかった)場合は、

資金繰り表ではどのようになるのでしょうか。

 

【表1-2】は、4月から5月までは前回の【表1-1】とまったく同じです。

【表1-1】と異なる部分は、

[D] 6月に銀行から借入をしなかった(あるいは、借入できなかった)、

というところです。 →⑨

 

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【表1-2】で確認すべきポイントは、

6月の翌月繰越(現預金の当月末残高)[F]がマイナスになっている、

ということです。

つまり、資金ショートが起こってしまった、ということになります。 →⑩

 

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資金繰り表を作成して事前に資金ショートしそうな時期や金額がわかれば、

前もって対策を考えることができます。

 

もし資金繰り表を作成していないと、直前になって慌てることになります。

ぎりぎりになって金融機関に借入を申し込んでも、審査に時間がかかるので、

間に合わない可能性があります。

場合によっては融資を断られることもあるので、

他の方法を手配していなければ本当に倒産してしまいます。

 

資金が潤沢にある会社を除いて、資金繰り(資金計画)はとても重要な業務で

あることがわかります。

 

 

次回予告:実績表と予定表

 

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世界の銀行から 大西洋銀行/マカオ

 

資金繰り表とは -2-

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資金繰り表の見かた

 

【表1-1】は、これから行う説明が理解しやすいように、

実際の資金繰り表を単純化したものです。

実際の資金繰り表は公庫フォーマットのように科目が多いため、

初心者がいきなり見ても理解しにくいです。

これからこの表を使って説明していきますので、

資金繰り表の見方や大まかな資金の流れをざっくり掴んでください。

 

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それでは、さっそく4月を例にして資金の流れを見ていきましょう。

 

[A] 月初に現預金の残高(前月繰越)は4,000であった。 →①

 

[B] 売掛金(3月の売上分)の入金が5,350あった。 →②

 

[C] 買掛金や人件費などの支払が合計で5,590あった。 →③

 

[E] 借入金の返済(毎月返済分)が210あった。 →④

 

[F] 上記の結果、月末の現預金の残高(翌月繰越)は3,550となった。 →⑤

 

1ヵ月の営業活動の結果、手元に残る現預金は、次の計算式の通りになります。

 前月繰越[A]+収入合計[B]-支出合計[C]+借入[D]-返済[E]

 =翌月繰越[F]

 

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4月の月末残高を5月の月初残高に繰り越すので、

4月翌月繰越[F]と5月前月繰越[A]は同額となります。 →⑥

 

5月以降も4月と同様に資金が流れていきます。

 

なお、6月は他の月と違う取引があります。

[D] 銀行から5,000を新規に借入した。 →⑦

 

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この表で確認すべきポイントは、

[F]翌月繰越(現預金の当月末残高)が毎月プラスになっている

 =資金繰りに問題はなかった、ということです。 →⑧

逆に言うと、[F]がマイナスになった月に資金ショートが起こるということです。

 

 

次回予告:資金調達しなかったら…

 

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世界の銀行から 臺灣銀行/台北

 

資金繰り表とは -1-

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基本は家計簿と同じ

 

資金繰り表とは、一定期間の企業の収入と支出を集計して表にしたものです。

企業版の家計簿のイメージでしょうか。

 

資金繰り表を作成することによって、資金(現預金)の残高の推移を一目で

把握できます。

事前に資金不足を把握できるので、急な資金ショートによる黒字倒産を避ける

ことができます。

 

 

勘定合って銭足らず---黒字倒産

 

資金繰り表と似たような表に損益計算書や月次試算表がありますが、

これらの表では資金繰りは把握できません。

資金繰り表の作成が必要です。

 

損益計算書や月次試算表は、一定期間の損益(経営成績=黒字か赤字か)を

示す書類です。

 

損益というのは会計上の考え方で、実際の資金(現預金)の残高とは異なります。

例えば、銀行から借入をして預金の残高が増えても、

会計ではこれを売上(収益)とは考えません。

また、掛売の場合は、商品を販売して売上を計上したとしても、

すぐに資金(預金残高)が増えるわけではありません。

 

資金繰りを把握していないと、いくら黒字経営をつづけていても、

資金不足で倒産するリスクがあります。

俗に「勘定合って銭足らず」といわれる状態です。

逆に、赤字経営であっても資金調達できていれば、会社は倒産しません。

 

 

実際の資金繰り表(フォーマット)

 

まずは次の表をご覧ください。

これは日本政策金融公庫で提供している資金繰り表のフォーマットで、

公庫のサイトからだれでもダウンロードできます。

 

ちなみに日本政策金融公庫は、国民金融公庫や中小公庫などが統合して

設立された政府系の金融機関です。

中小企業や個人事業主向けに資金調達の支援を行っています。

創業時に国民金融公庫(こっきん)の創業融資のお世話になった経営者の方も

多いでしょう。

 

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この書式、初めて見る方は、何が何やらわからないと思いますが、

安心してください。

簡単な表(サンプル)を使って、会社の資金の流れを説明していきます。

 

 

次回予告:資金繰り表の見かた

 

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世界の銀行から パブリック銀行・AM銀行/クアラルンプール

 

会社の資金繰りで困らないために

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 「いきなり!倒産」となることも

 

会社の資金(現預金)が不足してしまうと、

商品の仕入代金、家賃、従業員の給料、税金などが支払えなくなり、

関係者の信頼を失ってしまいます。

最悪の場合、会社が倒産することがあります。

倒産までいかなくても、設備投資などができなくなって、

会社の成長が止まってしまいます。

 

たとえ黒字で経営している会社であっても、資金繰りを把握していないと、

急な資金不足に陥ることがあります。

資金繰りを把握していれば、事前に資金不足になる時期や金額がわかり、

あわてずに前もって資金調達などの対策を講じることができます。

 

残念なことに、資金が潤沢で資金繰りで悩んだことのない会社は

ほとんどないでしょう。

 

 

知って損はない---資金繰りの知識について

 

会社の経理業務において、記帳、年次決算、税務申告などで税理士さんの

お世話になっている会社は多いと思います。

 

税理士さんとの顧問契約の内容によりますが、

資金計画や金融機関との交渉など、会社の資金に関する実務は自社で行っている

ケースが多いでしょう。

税理士さんも資金に関する相談に乗ってくれると思いますが、

必ずしも資金に詳しい税理士さんばかりではありません。

 

資金繰りの知識を学ぶことは、

経理マンを目指して簿記を勉強した(している)が、会社の資金に関する知識が

あまりない方にもおすすめです。

経理部と財務部の両方があるような大きな組織でもない限り、

会社の資金に関する実務についても、経理担当者に対して経営者や社内から

大きな期待が寄せられるからです。

 

 

 次回予告:資金繰り表とは

 

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世界の銀行から HSBCスタンダードチャータード銀行/香港