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収支と損益

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収支と損益は、一般的には似たような意味で使われていますが、

会社の経営管理においては、はっきり区別して(定義して)使用します。

 

 

損益、収益、費用の関係

 

損益(計算)とは、会社の一定期間の経営成績を評価するための会計上の考え方

です。

 

損益は、以下の式で計算されます。

損益=収益-費用

 

損益がプラスの場合を利益、マイナスの場合を損失といいます。

 

収益には、売上、受取手数料、受取利息、固定資産売却益などが該当します。

費用には、仕入、給料、支払家賃、通信費、水道光熱費、支払利息、減価償却

などが該当します。

 

 

損益と収支の違い

 

損益計算書や月次試算表を見ても資金繰りがわからないことの原因は、

損益と収支の違い(ずれ)にあります。

 

損益は、実際の資金の入出金(収支)の時期とは関係なく、収益は実現主義、

費用は発生主義という考え方で計上されます。

現代の企業が一過性のものではなく継続することを前提にしているため、

収益に対応した費用を適切に計上して一定期間の正しい損益状況(経営成績)を

示すことが目的で、実現主義、発生主義という考え方が採用されています。

 

どんどん本筋からはずれていきますので、ここでは実現主義および発生主義の

説明は控えておきます。

 

損益と収益の違いが生じるケースについて、以下に具体例を挙げておきます。

 

(1)売上と売掛金

 

飲食業のような現金商売の場合は、

売上の発生と同時に現金(資金)が回収されるため、

収益と収入の時期が一致します。

企業を相手にした取引では、通常は売上の発生時に売掛金となり、

対価としての資金の回収(入金)は後日になるため、

収益と収入の時期は一致しません。

業種、業態によっては、さらに売掛金の全額が入金されず、

一部が受取手形によって支払われます。

受取手形が決済されてはじめて資金化するため、

売上から回収まで長期間(数ヵ月)となることがあります。

 

売掛金という言葉は、ビジネスの世界では当たり前に使われているとずっと

思っていましたが、実はそうでもないようなので、説明しました。

 

余談ですが、

わたしがある会社の営業部門の売上計上業務を担当しているときに、

上司の部長から「売掛金とは何か?」と質問され、驚いたことがあります。

その部長は50歳代後半の方で、中途入社されたばかりでした。

前月の売上高確定の承認をいただくべく、営業部門の責任者である部長に

月次集計資料を提出しましたが、資料の説明をしている際に質問されたのです。

新卒で保険会社に入社し30年以上勤務して当社に転職してきたそうですが、

保険会社では売掛金という言葉に触れる機会がなかったということです。

保険会社の売上は保険料になりますが、保険の加入者(契約者)が個人であれ

企業であれ、保険料を支払わないことには保険契約の効力は発生しないので、

掛取引という考え方は出てこないのですね。

 

(2)仕入と買掛金

 

企業を相手にした取引では、通常は仕入の取引時に買掛金となり、

対価としての資金の支払(出金)は後日になるため、

費用と支出の時期は一致しません。

業種、業態によっては、さらに買掛金の全額を支払わず、

一部を手形の振出(支払手形)によって支払います。

支払手形が決済されてはじめて出金となるため、

仕入から支払まで長期間(数ヵ月)となることがあります。

 

(3)前払費用、前払金

 

家賃や保険料を前もって支払った場合です。

毎月支払えばよい費用であっても、例えば1年分を前払いすると割引になったり

することがあります。

その場合、会計上は支払った時点で全額を費用計上するのではなく、

サービスを受ける月に割り振って計上します。

 

(4)固定資産

 

固定資産を購入した場合、会計上は支払った時点で全額を費用計上するのではなく、

使用可能な期間に割り振って計上します。

この制度を減価償却といいます。

費用を割り振る期間(耐用年数)は、固定資産の種類により異なります。

 

(5)借入金

 

会計上は、借入は収益になりません。

同様に、返済は費用になりません。

 

 

次回予告:資金繰りが厳しい主な理由

 

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